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The Odd Life of Timothy Green ティモシーの小さな奇跡

アメリカ映画 (2012)

10才のCJ.アダムス(CJ Adams)が初主演したファンタジックな小品。設定は奇抜だが、一度その奇抜さを乗り越えれば、たとえ結末が予測できたとしても、感動的な世界にひたることができる。そして、一抹の寂しさも。とにかく秋の美しい風景が素晴らしい。ただ一つ残念なことは、監督がクローズアップを全く使ってくれないことだ。

子供を授かるのは医学的に不可能だと宣言された夜、「こんな子供だったら」と思う希望を紙に書き、それを箱に入れて庭に埋めることで、叶わぬ希望と決別する夫婦。その夜、激しい雨が降り、気付くと泥まみれの子供が部屋にいた。お風呂に入って出てくると、下肢に木の葉が10枚くらい生えている。そして、木箱を埋めた場所には大きな穴が。自分たちの希望が、奇跡を生んだと喜ぶ2人。ティモシーと自ら名乗る少年は、2人が紙に書いたような優しくて、嘘をつかないいい子で、100%厳密に書かなかったために目算違いもあったが、2人は最高に幸せだった。しかし、少年は知っていた。紙に書いたことが実現するごとに葉が1枚ずつ落ちていくことを。そして、最後の1枚が落ちた時が、永遠の別れとなることを。

CJ.アダムスは可愛いのだが、決して目鼻立ちが整っているわけではない。しかし、映画の雰囲気を体現するような不思議なムードに包まれていて、他の子役にはこの役柄は務まらないと思わせる。


あらすじ

長年にわたって不妊治療を行ってきた医師から、もう諦めて下さいと宣告されたジムとシンディの夫婦。その夜、ジムが口火を切る。「気持ちの切替えなんて」「どんな子が生まれるかと、そればかり考えてきた」「明日からだ」「でも今夜は、子供の話をしよう」。そして、シンディの反対を押し切り、「僕らの子は、絶対に あきらめない」「僕らの子は、君に似て心優しい」と理想を述べ始める。そのうちに、シンディも同調し始め、「これはどう? バカ正直」。「大正解」とジム。シンディ:「音楽の方は?」。ジム:「もちろん」「僕らの子は、ロック好き」。シンディ:「大賛成」。ジム:「芸術は?」。シンディ:「鉛筆を持ったピカソ」。ジムは「そうだ」と言ってグラスに半分ワインを注ぎ、「楽観的な人間(A glass half-full person)」と言う。画像と台詞がぴったりのしゃれた場面だ〔グラスに半分のワインを見て、半分もあると考える人=楽観的、半分しかないと考える人=悲観的〕。最後にサッカーの話となり、「僕らのすごい子は、1度だけ、サッカーで決勝点をあげる」と盛り上がったところで、急にシンディが現実に戻り、希望を書いた10枚ほどの紙を木箱に入れると、2人で庭に埋める。
  
  

急に土砂降りの雨が降り出し、雷鳴が轟く。目が覚めると、玄関のドアが開いてバタバタ音を立てている。誰かが部屋にいる。しかもあちこちに泥が。見つかったのは10才くらいの全身泥まみれの男の子。「やあ」「僕、ティモシー」。一瞬考える2人。実は子供ができた時のために、女の子だったら55人分の名を考えていたが、男の子の場合はティモシーしか考えていなかったのだ。とりあえず、お風呂に入れてきれいにする。その間、ジムは窓から外を見て、先ほど箱を埋めた庭に穴が開いているのに気付く。さらに、シンディは、お風呂上りのティモシーの足に木の葉が生えていることにも。ティモシ-は、「葉っぱのことは訊かないで」「でも、見たいなら見てもいいよ」。木の葉は引っ張っても取れない。本当に生えているのだ。
  
  

夜遅いキッチンで、ティモシーに飲み物を出しながら、2人をどう呼ばせるかで話し合っている。気楽に、シンディとジムでいいと言う2人に対し、ティモシーは「どうして?」と訊く。これはいきなり気さく過ぎたかと、グリーンさんにするかと言い出すと、いきなり「ママ。だよね?」とティモシー。そして、「パパだ」とニッコリ。隣の部屋で相談する2人。ママとパパと呼ばれたので、これは奇跡が起こったに違いないと確信する。「授かったの?」。「そんな気がしてきた」。部屋に戻ると、ティモシーがすやすやと寝ている。ジムは、起こさないようにベッドに運ぶ。
  
  

夜が遅かったせいで、翌朝は朝寝坊。ところが、その朝は親戚一同が家に来る日だった。チャイムの音に気付きドアを開けるティモシー。そんな子がいるとは夢にも思わなかったのでびっくりするシンディの姉。シンディとジムも慌てて降りてきて、ティモシーに長靴下を履かせる。庭を占領した大勢の親戚一同。まずはシンディの育ての親のバブ伯父さんに引き合わす。「やあ、チビちゃん」。「やあ、お爺ちゃん」。その返事にムカっときたのか「わしが発明したんじゃ、ピーナッツバターとジェリーのサンドイッチを」と自慢げに言うと、「それ僕の大好物だって知ってた?」「じゃあ、さよなら」と爽やかなティモシー。一方、シンディの姉は、突然養子を取ったことを責めている。どんな子か分からないとか、病気持ちかもとか。その時、雲間から陽が射し、ティモシーがその光を全身で受けるように腕を広げる。「ほらあれ、フツーじゃないわ」。陰険な女性だ。
  
  

ティモシーの初めての登校。早速イジメに遭い、顔中に食べカスを塗りたくられる。しかし、怒りも泣きもしない。そして、一目見て気に入ったジョニのという年上の女の子が寄って来て、頭の上にサクランボを置くとニッコリ。ジムは、誰にやられたと訊き、自分の会社のボスの子供だと知り、それでも決然と文句を言いに行く。しかし、一緒に付いていったティモシーは、元々「アートだよ」と言っていたので、イジメっ子の家の前でも「気にしてないのに」とサッパリ・ムード。結局、誕生パーティに招待され、「やった!」。パーティでは、長靴下を履いたままプールに飛び込む。沈んだきり上がってこないのを心配したジョニが、潜っていくとプールの底に座っている。近付き、キスする振りをして、長靴下をめくって木の葉を見てしまう。
  
  

ジョニは、ティモシーを追いかけ、木の葉を見られたこと、知ってるでしょと迫る。しかし、それは秘密を暴露するという脅迫ではなく、自分にも母斑があり、「秘密があるのは、あんた一人じゃない」と言うためだったのだ。2人の心が通い合い、ティモシーはジョニの自転車に乗って、紅葉の見事な住宅街の並木を通り、森へと向かう。美しい映像だ。一人になったティモシーが、急に悲しげな表情に変わる。足の木の葉が1枚落ちたのだ。両親が書いた紙の「希望」が叶う度に、葉は1枚ずつ落ちていく。その定めをしっているからこその寂しい表情がたまらない。
  
  

バブ伯父さんが入院し、危篤状態になる。慌てて飛んでいく3人。病室に集まった親族の中で、伯父さんは、なぜかティモシーにだけ部屋に残ってくれるよう頼む。そして、「訊きたいことはないか?」と楽しげに話し出す。危篤状態なのに病室で笑いこける伯父。「あんなに笑うのが、また聴けるなんて」と見て涙ぐむ伯母。その陰で、ティモシーの木の葉がまた1枚落ちていった。それを追うように、伯父も亡くなる
  
  

この町を支える産業はただ1つ。ジムが勤めている鉛筆工場だ。しかし、鉛筆そのものの需要が激減した現在、工場は閉鎖の危機に直面している。ボスの命令でリストラを言い渡す係りにされ、落ち込んで帰宅するジム。なぐさめようと、居間の床に食事を並べて話し始める。その中で、「もう鉛筆を作れなくなるとはな」と悲しそうに言うジムに対し、ティモシーは「なぜ、新しい鉛筆を作らないの?」と訊く。そして、「パパがアイディア、ママがデザイン、2人でやれるじゃない」。その期待を裏切ってはと頑張る2人。試行錯誤の末、木の葉をすり潰したものを整形して、斬新な鉛筆を作り上げることに成功。
  
  

会社の記念日に、シンディが勤める鉛筆記念館に付いていったティモシー。社長夫人の肖像画が披露される。夫人は絵の出来映えに不満げだ。絵を見ていたティモシーに、「坊や、あれ どう思う?」と訊く。「ぼちぼち」。「正直なのね」。大枚払ったとグチる夫人に「僕ならタダでよかったのに」とティモシー。「もっと巧く描けるって言いたいの?」。「やってみる」と、鉛筆でデッサンを始める。「鉛筆を持ったピカソ」と紙に書いた通り、見事な絵に仕上がったが、「バカ正直」も効いてしまい、夫人のあご髭までバッチリ描いてしまった。
  
  

ティモシーは、ジムの希望でサッカークラブに入れられていたが、万年給水係の背番号ゼロ。しかし、「1度だけ、サッカーで決勝点をあげる」と願ったことを覚えている2人は、シーズン最後の試合にそれが実現すると信じている。試合が始まり、1対1、終盤間際に1人がケガし、ティモシーに出番が回ってくる。コーチは一歩も動くなと命じる。しかし、急に陽が射し、日光を全身に浴びると、人が変わったようにボールを操り始める。しかし、最後の最後に見事に蹴ったボールは何とオウンゴール。がっかりする聴衆。しかしそれ以上に落胆したのは、ティモシーだった。木の葉がまた落ちたのだ。残りは1枚しか残っていない。
  
  

サッカーの慰労会の後、「ジョニだよ。最高にカッコいい女の子」と紹介した後、連れ立って外に出ていく2人。この2人は、シーンは相前後するが、下の1枚目の写真にあるような造形アートを、森の中で一緒に製作した仲だ。暗い木立の下で、「これまで一緒で最高だったね」とティモシー。「私も」。「手の打ちようがないから両親には話してないんだけど、君には知っておいて欲しいんだ」。「何なの?」。「これは、仕方のないことなんだ。でも、心配しなくても大丈夫」。そして秘密を打ち明ける。両親の見たのは、ジョニが「ティモシー」と叫び、2人で抱き合う姿だった。まるで、別れたように見える。後から、そう訊かれると、ティモシーは「うん、さよならしたの」と答える。そして、なぜとの質問に、「分からないだろうね」と曖昧な返事。
  
  

鉛筆工場閉鎖の噂で満員となった会場。社長は、安心させようと、閉鎖ではなく新製品の紹介だと言う。そして、以前、ジムがボスに預けておいた作品を取り出し、自分の息子(ボス)が発明したのだと話す。それを聞いて、1人でマイクのところまで行き、「違います」と発言するティモシー。「新しい鉛筆を考案したのは、僕の両親、ジムとシンディ・グリーンです」。ボスは、オウンゴールをするようなガキがとこき下ろし、ジムとシンディは怒りを込めてティモシーを擁護する。以前、絵を描いてもらい一目置いている社長夫人は、「木の葉で鉛筆を作るという発想がどうやって浮かんだか、話してくれる…」と言って、急に息子にマイクを振る。ボスは、しどろもどろだ。今度は、「あなたは?」とシンディに訊く。「ティモシーが家に来てから、木の葉は私たちに生活の一部となりました」。「なぜ?」。そこでティモシーが遂に、「僕の足に生えてるから」と言う。「木の葉が、足に?」「見たいわね」。ティモシーは「見せる時だ」と言い、壇上に上って裾をめくる。紅葉した1枚しか残っていないが、木の葉は確かに生えている。会場は奇跡で沸き返るが…
  
  

家に着いた時、たまりかねてシンディが「何を隠してるの?」と訊くと、「中に入ろうよ」。そして、玄関を入った所で話し始める。「話さなかったんだ。言っても、何もできないから」。「お願い教えて」。「葉っぱがなくなると…」。「あなたも いなくなるの?」。頷くティモシー。「いつ?」。そして、左足のズボンから最後の葉が落ちてくる。「今だよ」。「ダメ、ダメ」と泣くシンディ。「ダメよ坊や、行かないで」。「仕方ないよ、定めなんだ」「時間はすごく短い」「他の子は大人になって巣立つけど、僕は葉っぱがなくなると消える」。そして、「あきらめないで」の言葉を最後に、抱き合ったまま雷鳴と共に消えてしまった。
  
  

2人が、雨の降りしきる庭を掘り起こすと、そこには以前埋めた時に使った木箱が。中には1通の手紙が入っていた。最後の木の葉を添えて。「愛をこめて、ティモシー」とサインされた手紙には、最後に2人に向けて、こう書かれていた。「もし、あなた方に、こう訊かれたら… 『あなたを心から欲しがってる人がいるの。2人ともベストを尽くすわ。失敗もするけど。一緒にいられるのは短いかもしれない。でも、想像できないほど愛してくれる』。それが本当なら、僕はこう答えるよ… 『何だって可能だ』と」。そして、映画は、女の子が養子として2人の元に連れて来られるところで終わる。2人の夢はこうして叶ったのだ。
  
  

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